2000年(平成12年)3月現在の全国の電話帳登録世帯(約3千万世帯)を利用して、徳山姓(3,183件)の市区町村別分布を調べ、世帯数および世帯数密度の上位10市区町村について考察しました。
(近畿・中国地方詳細図はこちら。)

世帯数の順位について

 徳山姓の多く分布しているのは「大阪市の周辺部」と「岡山から広島県東部の地域」であることがわかります。この2地区が最大の徳山姓分布地です。

 第1位は大阪市生野区となりました。徳山姓の多さは全国では1,250位でしたが、ここ生野区だけで見るとなんと第28位と突出しています。この地域には徳山の地名もありませんし、徳山姓の発祥は確認されていません。にもかかわらず、これだけの徳山さんが集中しているのには何か訳がありそうです。
 ここからは推測になりますが、第1には、徳山は西日本の姓ですから、戦後の都市化の中で西日本第1の都市大阪に集まったことが考えられます。しかし、特に生野区に多い理由にはなりません。そこで第2の理由ですが、大阪市生野区は在日朝鮮人2万人が集中する日本一のコリアンタウンですから、「徳山姓のルーツ」でもご紹介した、「創氏改名」による徳山さんが多数いらっしゃるのではないでしょうか。ボクシングスーパーフライ級世界チャンピオンの徳山昌守氏も、生野区在住です。
 第3位の東大阪市、第5位の尼崎市、第6位の堺市、第8位の大阪市東成区も同様の理由によるものかもしれません。

 第2位の岡山県笠岡市も84世帯とかなり突出しています。しかも、このうち71世帯(85%)が笠岡市吉田に集中しており、その地区の中でも吉田の高称寺を取り巻くように分布しています。古い時代にかなり有力なグループが住み着いたものと推測されます。詳しくは「岡山県笠岡市の徳山氏」をどうぞ。
 第4位の尾道市、第7位の福山市は笠岡市と隣接する市で、何らかの関係があるかもしれません。

 第9位の岡山市の徳山氏のうち、出自のわかるのは岡山藩士徳山家の流れをくむ家です。池田光政公の時、お国換えに従って岡山に移ってきたといいますから、寛永9年(1632)以来ということになります。
 さらに、現在の岡山市内在住の徳山氏には、市外からの2つの移住ルートが推測されます。一つは笠岡市吉田に発する徳山さん、もう一つは県北の川上村(「苗字の地」である上徳山・下徳山を有している)に発する徳山さんです。ちなみに、川上村の徳山さんは22世帯で全国17位となっています。なお、倉敷市にも22世帯の徳山さんがいらっしゃいます。

 こうして見てくると、「大阪市の周辺部」と「岡山から広島県東部の地域」の2地域で第9位までを独占していることがわかります。近畿・中国地方詳細図でご確認ください。

 近畿・中国以外の地域では、東京、名古屋のほか、熊本・福岡県境付近、福岡市周辺、金沢市周辺、岡山県北から鳥取県などに多く分布しています。
 世帯数の多い市区町村を拾うと、熊本県玉名市(25世帯)、熊本市(23世帯)、石川県金沢市(25世帯)、静岡市(19世帯)、愛知県岡崎市(17世帯)、高知県安芸郡東洋町(15世帯)、鹿児島県名瀬市(17世帯)、沖縄県那覇市(16世帯)などとなっています。


世帯数密度の順位について

 次に、世帯数密度(徳山姓世帯数の、電話帳登録世帯数に対する割合)で比べてみましょう。全国合計の世帯数密度は0.01083%。約9,200人に一人が徳山姓ということになります。

 さてここで、市区町村別のベストテンを選ぶわけですが、ここでは、徳山姓世帯数10世帯未満の市区町村は除くことにします。というのは、非常に小さな村や離島などでは、数世帯の徳山さんが住んでいる場合、非常に大きな密度が出て、参考にならないからです。
 例えば、単純に全市区町村を計算すると、第1位は、東京都御蔵島村(伊豆諸島の、三宅島の隣の島)となります。電話帳登録世帯93世帯中7世帯(何と7.53%、13人に一人が徳山姓です)が徳山さんだからです。

 第1位は岡山県真庭郡川上村となりました。2.82%という密度も他を圧倒的に離してダントツです。世帯数10人以下の市区町村を加えた全市区町村でも、上記の御蔵島村に次ぐ第2位で、密度が1%を超えるのは全国でもこの2村だけです。2.82%とは、約35人に一人が徳山姓ということになります。村では3番目に多い姓となっており、驚くべき密度です。川上村は「苗字の地」である上徳山・下徳山を有しており、その由緒からしても堂々の「徳山氏の村」と言えるでしょう。

 第2位に高知県安芸郡東洋町が入ってきました。由来などについてはわかりません。

 第3位は鳥取県東伯郡大栄町。町では32番目に多い姓です。世帯数10世帯未満も拾ってみると、鳥取県内には八頭郡佐治村(8世帯、密度0.83682%)にもかなりの分布が見られます。「徳山地名事典」で述べたように、鳥取県東伯郡三朝町にもかつては徳山の地名があったようで、大栄町と佐治村は三朝町の北と東に当たり、これとの関係が想像されます。

 第4位の沖縄についても由来は不明ですが、古くから徳山の姓と地名があったようで、渡久山に変更を強要された歴史もあり、ぜひ解明したいものです。

 第5位には岡山県笠岡市。笠岡市内では38番目に多い姓で、200人に一人が徳山姓となります。市レベルでこの密度は第1位ですし、世帯数でも第2位であり、徳山氏には関わりの深い市と言えるでしょう。

 第6位の伊仙町と第10位の徳之島町はいずれも徳之島にある町です。徳之島にはもう一つ、天城町があり、ここにも徳山さんが4世帯あります。徳之島合計では26世帯。どのようなルーツなのでしょうか。奄美大島にも25世帯の徳山姓があり、この地域の徳山さんの出自については沖縄同様興味があります。

 第9位の熊本県玉名郡岱明町周辺も徳山姓の多いところです。玉名市(25世帯)、玉名郡天水町(6世帯)、玉名郡横島町(4世帯)の密度は、いずれも(世帯数10人未満も含めた)全市区町村中でもベスト10から30に入るレベルです。この地域の徳山さんの出自についても未調査です。

 この他興味深いところをあげてみると、石川県では徳山五兵衛が天正年間(1580年頃)に、相次いで御幸塚城、松任城、小松城の各城主を歴任しており、当地の徳山氏はこれと関わりのある人たちの子孫もいらっしゃいます。また、徳山の地名のある能美郡辰口町には徳山さんが9世帯あり、密度も0.26549と、(世帯数10人未満も含めた)全市区町村中でもベスト20に入るレベルで、地名との関係に興味がわきます。