昭和14年に、朝鮮人に対し日本式の名前を事実上強制する「創氏改名」が行われました。その際、徳山を名乗ることになったという由来を持つ、歴史を背負った徳山さんもいらっしゃいます。

「創氏改名」とは

 昭和14年11月10日、時の朝鮮総督府は制令第19号により、朝鮮民事令11条を改正し、すべての朝鮮人に対し、日本式の「氏」を創らせることとしました。この制令は翌年2月に施行され、ほとんどの朝鮮人が日本式の氏を持つことになりました。この時に徳山を氏として選んだ方々がいらっしゃいます。そして、在日の方々の多くはこの苗字を現在でも使っています。

 「創氏改名」について、ここでは詳しく説明しませんが、ご興味がおありの向きは、検索エンジンで「創氏改名」をキーワードに検索してみると、ネット上にも多くの情報があることがわかると思います。そして、こうしたテーマには共通ですが、強制であったかどうかなどいろいろな論争があることもおわかりいただけると思います。当サイトでは、この歴史的問題を論ずるつもりはありません。「創氏改名」が行われたという歴史的事実にたって、そういうルーツを持つ徳山氏について調べてみようというのが当サイトの立場です。

洪さんが徳山に?

 現代の徳山さん有名人の一人に、ボクシングスーパーフライ級元世界チャンピオンの徳山昌守氏がいますが、彼の本名も洪昌守(ホン・チャンス)です。「創氏改名」に当たって、朝鮮の方々は、姓の一字を生かしたり、本貫(一族の出身地)の地名をとったりと、氏にも先祖の繋がりを残す努力をされた例も多いようです。また、強い宗族意識から、姓と本貫の両方をともにする一族がそろって同じ氏を選んだケースもあったようです。ここからは私の推測になりますが、朝鮮には徳山(トクサン)という地名がありますから、洪一族が本貫の地名をとったのではないでしょうか?この推測が正しいかどうか、今後情報が集まればと思っています。

忠清南道 礼山郡 徳山面

 「徳山地名事典」では日本国内の徳山を捜しましたが、実は、韓国にも徳山(トクサン)があります。忠清南道 礼(禮)山郡 徳山面というところで、ソウルの南西、バスで3時間くらいの所のようです。歴史のある徳山温泉というのがあるようです。(ちなみに、岡山県真庭郡川上村下徳山にも徳山温泉があります)

 2003年に家族で韓国を旅行した際、ガイドの方がインターネットで徳山について調べてくれました。それによると、礼山郡徳山面を本貫とするのは、金、宗、李、黄、洪、姜など9姓と書かれていたそうです。(確かに、このWebを見てメールをくださった徳山を名乗る在日韓国人の方で、元の姓は「姜(カン)」だと教えてくださった方もいらっしゃいました)インターネットには、その他、周の王家の末裔とか、慶州に徳山寺があるとか書かれていたとも聞きました。もっと調べてみたいのですが、残念ながらハングルが読めません。どなたか、在日の徳山さんで、調べてみてくださる方があると有り難いのですが...。

まだある朝鮮半島の徳山

 忠清南道 礼山郡 徳山面の他にも朝鮮半島には何カ所か「徳山(トクサン)」の地名があります。まず、韓国国内にも上記以外に、忠清北道 鎮川郡 徳山面というところがあるようです。

 また、北朝鮮にも4ヵ所存在することが「朝鮮民主主義人民共和国地名辞典」からわかりました。洪昌守氏のゆかりの地はこのいずれかでしょうか?
  ・平安南道 平城市 徳山洞
  ・黄海北道 金川郡 徳山里
  ・咸鏡南道 咸興市 会上区域 徳山洞
  ・咸鏡南道 金野郡 徳山里

 いずれにしても、国と時間を超えて同じ苗字を名乗る、不思議なご縁であります。

(参考)在留外国人統計

 1998年12月31日現在で、在日韓国朝鮮人の方は約63万人いらっしゃいます。この内、都道府県別で人口の多い県をあげると、①大阪府 約163,000人、②東京都 約92,000人、③兵庫県 約66,000人、④愛知県 約49,000人、⑤京都府 約42,000人、となっており、この5都府県で65%を占めています。「徳山姓の市区町村別分布」でも触れたように、大阪市生野区をはじめ、これらの都府県には「創氏改名による徳山氏」がいらっしゃる可能性が高いといえます。徳山昌守氏も東京都大田区出身で現在は大阪市生野区在住と聞いています。

 なお、在日韓国朝鮮人の本籍地を調べた統計(「在留外国人統計」平成11年版、1998年現在)によれば、以下の通り、半島南部の出身者が多いようです。
  ・慶尚南道 35.32%
  ・慶尚北道 22.78%
  ・済州道 17.38%
  ・京畿道 9.32%
  ・全羅南道 7.75%
  ・その他 7.45%